眼瞼下垂・眼形成

1. 眼瞼下垂がんけんかすい

上まぶたを挙げる筋肉がゆるみ、うまく働かないことが原因でまぶたが下がっている状態のことを指します。目が開きにくい、視界が狭く上を見づらい、よく「眠そうな目」だと言われるなどの症状が見られます。

(1)先天性眼瞼下垂

先天性(生まれつき)まぶたを挙げる筋肉のつくりが不良なため、幼少の頃よりまぶたが下がってしまいます。

(2)加齢に伴う眼瞼下垂

加齢によりまぶたを挙げる筋肉(眼瞼挙筋)の付着部がのびてしまい、まぶたを上げにくくなった状態です。高齢者で多く見られます。

(3)その他

眼瞼痙攣などで眼瞼下垂が生じる場合があります。

眼瞼下垂の治療

眼瞼下垂

皮膚やまぶたの裏を切開し、たるんだ筋肉の付着部を短縮して付け直すとまぶたが上がるようになります。手術時間は両眼30~60分程度です。まぶたの裏の切開の場合には表面に傷は残りません。皮膚弛緩がある場合にはたるんだ皮膚をすべて切除します。一重まぶたであった場合には術後に二重まぶたになるように細工をします。これによりまぶたを大きく開くことが出来るようになります。

先天性の場合、局所麻酔で施行可能な場合は、当院で施行します。下垂の程度が軽度で、術中に挙筋の状態が比較的健常な場合は、拳筋短縮術を選択します。重度の下垂の場合は、おでこの筋肉(前頭筋)の動きをまぶたに伝えることで眼を開けられる手術(前頭筋吊り上げ術)を施行します。

ハードコンタクトレンズ下垂

図1. ハードコンタクトレンズ下垂

ハードコンタクトを長年使っている方は、レンズと眼瞼がこすれて眼瞼下垂になります。手術を行うと眼が大きくなり、二重瞼になります。眠そうな目つきから、はっきりとした目つきになります。

図2. 同じくハードコンタクトレンズによる眼瞼下垂

手術前は眠そうな目つきでしたが、手術後、表情が明るくなったように見えます。

図3. 高齢の方の眼瞼下垂

高齢者においては、手術でまぶたを上げることにより外界の刺激が目から脳に入り、日常生活の活動性が増すことが期待できます。

2. 眼瞼皮膚弛緩がんけんひふしかん

皮膚がたるみすぎて視界が狭くなった状態を眼瞼皮膚弛緩症といいます。この場合も手術の対象になります。高齢で皮膚がたるむ場合と、上眼瞼が厚ぼったい皮膚弛緩の方(若年者でも見られます)でみられます。

眼瞼皮膚弛緩の治療

余分な皮膚を切除する手術が有効です。手術は両眼で約30分から60分程度です。患者様の状態により、切開を眉毛の下で行うか、二重の溝の部分で行うかを選択します。

眼瞼皮膚のたるみ

図1. 眼瞼皮膚のたるみ

皮膚切除を行うだけで若いときの自然で綺麗なまぶたが表に出てきます。
とても明るい表情になります。

図2. 眼瞼皮膚のたるみ

同じく術後に若いときの二重が出てきました。
男性も、とても愛らしい表情に変わります。

3. 逆さまつげ

まつげが目に刺さり、痛みや異物感などを起こす病気です。様々なタイプがあり、眼瞼内反(がんけんないはん)・睫毛乱生(しょうもうらんせい)・睫毛内反(しょうもうないはん)などに分けられます。程度の軽いうちはまつげを抜く処置で対処できますが、ひどくなると手術が必要になります。先天性(生まれつき)と加齢に伴い生じるものとがあります。睫毛乱生症は一部の睫毛が眼球側を向いている状態で、高齢者に多くみられます。

おとなの逆さまつげ

(1)眼瞼内反の場合

まぶたの向きが眼球の方を向いているため、すべてのまつげが眼球と接触してキズを作り、チクチク・ゴロゴロしたり目ヤニがでたりと『いずい』症状をきたします。 加齢に伴うまぶたの水平方向、垂直方向の弛緩が原因です。まつげを抜くと一時的に症状は改善しますが、毛根は残るためほどなく再発します。原則的に手術が必要です。

眼瞼内反の治療

糸を通すだけの手術(埋没法)を行います。再発例には切開法(外眥形成術など)で手術を行います。

当院では水平方向と垂直方向の両方を矯正できるように改良した埋没法を施行しております。片眼10分程度と短時間で施行可能であり、切開法に比べ低侵襲で患者さんへの負担が少ないのが特徴です。

逆さまつげ

(1)睫毛乱生の場合

まぶたの位置は正常ですが、一部の睫毛だけが眼球側を向いて生えている状態です。黒目に睫毛が触るので異物感(ゴロゴロ、ツカツカ)が出たり、視力障害がみられたりすることもあります。

睫毛乱生の治療

局所麻酔下に方向を間違えている睫毛根をすべて切除します。睫毛根電気分解より完治率が高い手術です。

子供のさかさまつげ

幼児の逆さまつ毛は、睫毛を外に向ける支える線維の発達が悪いために起こるとされています(睫毛内反)。成長するにつれて徐々に治ることもありますが、10歳を超えても存在する「逆さまつ毛」は改善の可能性が少なく、手術を行うことをお勧めします。

睫毛内反の治療

小学生・中学生までは全身麻酔で、高校生から局所麻酔で行っています。当院では現在全身麻酔手術は行っておりませんので、姉妹院の『仙台なみだの眼科クリニック』 の手術室で行います。

目頭の皮膚がかぶさっている場合(余剰皮膚)、目頭側の睫毛内反の改善のために内眥切開(目頭切開)を睫毛内反手術(皮膚切開法)と同時に行うと改善効果もよく目元がはっきりして美容的にも良好となります。

術後早期には組織の腫れがあるため術創部はとても目立ちます。しかし徐々に改善し、約3か月程度で目立たなくなります。

上下眼瞼のさかさまつ毛と、目頭の余剰皮膚(内眼角贅皮)があり、上下の内反症手術に内眥形成術も併用して手術を行いました。まつ毛の向きの改善のみならず、見た目も大きく変化していることがわかります。

下眼瞼の内反症手術と、目頭の余剰皮膚切除(内眥形成術)を行いました。上眼瞼は手術していませんが、皮膚の緊張の方向が変化するため、隠れていた二重まぶたが露出しています。目頭の白目の露出面積が大きく変化していることがわかります。

4. 顔面神経麻痺

眉毛を挙上し、下眼瞼の外反を修正します。 これにより左右対称なまぶたを作ります。

5. 甲状腺眼症

バセドウ病・甲状腺眼症の大きな問題点は、点滴や内服の治療を受けて安定期に入っても、風邪のように治ったら元通りではなく、以前とは全く異なる見た目・容姿になってしまうことです。
特に見た目の変化が起こるのは、その多くが若い女性であるということが問題です。
英語ではこの醜い眼球突出をDisfiguring Proptosis(眼球突出による醜形)と呼んでいます。副腎皮質ステロイド・放射線治療などの内科的治療で治らなかった場合には、手術治療が必要です。
眼窩減圧術は眼の周りの脂肪・軟部組織や骨を切除し、眼球突出を元に戻すための手術です。
当院の連携院である新前橋かしま眼科形成外科クリニックではこの眼窩減圧術を積極的に施行しております。まぶたの裏の結膜や皮膚のシワの中を切開するため、傷跡はほとんど残りません。
甲状腺眼症でお悩みの患者様は当院に是非ご相談ください。

6. 下まぶたのふくらみ、クマ取り

顔の中のシワや影の中でも見た目に大きな影響を与えるのが下まぶたのクマです。下まぶたにクマがあると疲れたように見え、年齢以上に老けて見えてしまいます。

(1)原因

加齢性の変化がほとんどです。

(2)治療

手術による治療を行います。ヒアルロン酸注射や脂肪注入などの注入治療を繰り返すと、不自然な下まぶたを形成してしまうリスクがあるためです。目の下の余分な脂肪を除去すると同時に、余分な脂肪を目の下の方に逃がしながら固定することで、目元にナチュラルな曲線をつくり、手術後も長持ちさせる方法がハムラ法と呼ばれています。

当院は裏ハムラ法を行っています

裏ハムラ法は通常のハムラ法と違って皮膚を切開せずに、白目(結膜)側から切るので、傷が残らない方法です。比較的、皮膚のたるみの少ない方に向いています。一般的には脂肪をただ取り除くだけの手術(経結膜脱脂法)が多く行われていますが、裏ハムラ法の方が有効な手術です。というのも、膨らんだ脂肪取りのみの手術をすると、一時的にたるみは改善されますが、数年後に目の下が全体的に窪んでくる可能性があり、陰になって暗く見えてしまいます。また、皮膚の小じわが逆に目立ってしまうこともあり、結果、より老けた印象になってしまうケースが多いのです。

裏ハムラ法は目の下の膨らみを取ると同時に、頬の窪んでいる部分にボリュームを持たせ、脂肪を下方向に移動するときに適切な場所に移動させて効果を発揮します。
裏ハムラ法のポイントは、脂肪をくぼんでいる部分にしっかりと移動する事です。ここのポイントで時間をかけて、しっかり確認しながら確実に脂肪を移動させます。さらに個々人の状態に合わせ、出血を抑える薬剤を使用し、脂肪の一部切除や、ヒアルロン酸注射を組み合わせて治療しています。

もちろん皮膚のたるみが強い場合には皮膚を切除する方法を組み合わせることもあります。

当院では、一時的な効果だけではなく、長期的な効果が得られる方法を追及しております。

靭帯を切除

目の下にあるクマの原因となっている靭帯を切除します。

眼窩脂肪を移動させる

その後、突出した眼窩脂肪を頬の骨の前方に移動すると段差がなくなります。

当院の症例

術前

術後3ヵ月

7. 眼窩壁骨折

眼部に手拳や野球のボールなどが当たったときに見られる特殊な顔面骨折です。複視(物が二重に見える)、眼球陥凹(眼の落ちくぼみ)や頬~上口唇のしびれなどが生じます。

(1)病気の原因

眼球を入れる骨のくぼみを眼窩と言います。眼窩壁の鼻側~下壁(床)は薄い骨でできているため、外傷による強い圧力が加わると骨折してしまいます。

眼窩内壁のスケールモデル

眼窩内壁のスケールモデル
内壁はほぼ平面状に存在している。内壁の奥のスペースは篩骨洞がある。

眼窩下壁のスケールモデル
眼窩下壁中央に大きな亀裂(下眼窩裂)が見える。下壁の奥のスペースには上顎洞がある。

(2)症状

骨折部から眼窩内の脂肪組織や眼を動かす筋肉などがはみ出しますので、眼が落ちくぼんだり(眼球陥凹)、眼の動きが悪くなって物が二重に見えたり(複視)、吐き気を催すことがあります。眼窩の下壁には知覚神経が走っているため、頬~上口唇の感覚が麻痺する事もあります。また、鼻をかむと血液の混じった鼻水が出ます。このような状態で鼻をかむと、逆に骨折部から眼の周囲組織に空気が入ってひどい場合には視力障害を起こしますので、鼻をかんではいけません。

眼球陥凹(右)

右眼の著しい下転障害を認める。

(3)診断

症状に加えて、眼球運動検査やCT検査で診断を確定します。

右眼窩内壁骨折(冠状断CT)

右眼窩内壁骨折(冠状断CT)

眼窩内壁が偏位し、篩骨洞内に突出している。内直筋が内側に偏位し、腫大しているように見える。(矢頭)

右眼窩内壁骨折(水平断のCT)

右眼窩内壁骨折(水平断のCT)

眼窩内壁の骨折があり、篩骨洞がつぶれている。(矢頭)
眼窩脂肪が偏位・嵌頓し、それに伴って視神経の弯曲も見られる。

眼窩下壁骨折(冠状断のCT)

眼窩下壁骨折(冠状断のCT)

眼窩下神経管周囲が蝶番状となっている。(矢頭)
折れた骨は上顎洞内に偏位している。

眼窩下壁骨折(冠状断のCT)

開放型骨折があり、下壁が上顎洞内に落ち込んでいる。(矢頭大)
下直筋が偏位し眼窩内から脱出している。(矢頭小)
それより後方のスライスでは下直筋が骨折縁に引っかかっているのが見える。(矢頭)このような場合には重度の上転障害を訴える。

眼窩下壁骨折(閉鎖型)の冠状断CT

眼窩下壁の破綻とともに、眼窩内から下直筋が消失し、「missing rectus」と言われる状態。閉鎖型骨折で外眼筋が巻き込まれた場合には準緊急手術の適応となる。時間が経過すると筋肉が壊死をきたし、複視が生涯にわたって残る。

(4)治療

症状が一切見られない場合を除き、原則的に手術が必要です。手術は全身麻酔で行います。通常は受傷から1~2週間以内に治療しますが、まれに緊急手術が必要になることもあります。亀裂型の骨折が起き、その部位に組織が挟まれると閉鎖型骨折という状態になり、血のめぐりが悪くなって組織が壊死を起こしてしまうためです。

【緊急手術を要する危険なサイン】

(1)鼻血が出ていて嘔気がひどい
(2)うずくまって動かない
(3)CTで眼窩内にあるべき外眼筋が無い

白目(結膜)からアプローチする眼窩骨折手術

当院は皮膚を切らずに、白目(結膜)からアプローチする眼窩骨折手術を行います。
高い技術力が求められますが、短時間かつ術後のダメージを軽減できます。治療の目的は骨折部に移動した脂肪や筋肉などの組織を元の位置に戻すことです。
ただし、脂肪や筋肉を生来の位置に戻すだけではまたそのスペースに戻ってしまいます。そのため折れてしまった骨を一旦取り出して生来の位置に戻すか、人工の骨をその代わりに使用して生来の位置に戻します。

術前1
術前2

術前:左まぶたのへこみ(眼球陥凹)と左眼の内方偏位が目立つ

術後1
術後2

術後:左眼の眼球陥凹は改善し、左眼の位置も改善している

術前CT:前医で手術を施行されているが、左眼窩内壁と下壁の整復は不十分

術後CT:人口骨を足場にして、その上に人口骨プレートを置き、左眼窩内壁と下壁の位置を右眼に近づけている。

当院では皮膚を切開しません

当院の眼窩骨折の手術は、白目(結膜)からアプローチしますので、皮膚に傷あとを残しません。これはオキュロフェイシャルクリニック東京で学んだ世界最先端の手術方法です。皮膚を切らないことで、傷あとを残さないだけでなく手術時間は短く、身体の負担を少なくすることが可能です。

受診される患者様へ

当院のオンライン予約システムが混雑している事もありますので、眼窩骨折が疑われる患者様はまずはお電話にてご相談ください。当院は原則的に待機的手術(術後1~2週間以内)の治療を担当しています。申し訳ございませんが、緊急型の場合は即日の対応が困難である場合もあります。受傷後の症状が強い場合も含め、まずはお電話にてご相談くださいませ。